家全体を整理収納 その戦略、段取りは?
クライアントからの整理収納サービスの依頼は、「家全体の整理収納をお願いしたい」というものが多いです。それはなぜか?整理収納は、時として、一か所だけを完璧に仕上げたとしても、根本的な解決にならないことがあるからです。例えば、リビングの棚の書類の整理収納を行ったとしても、他の部屋の引き出しや押し入れなどにも、書類が分散して入っていると、リビングの棚一か所だけを見てそこを整えたとしても、本来の“書類の整理”にはならないことがあるからです。整理収納を行う上では、一か所だけを見てその範囲だけで解決しようとするのではなく、家全体の物量や、部屋の使い方、モノの分類方法、収納場所や方法など、全体を見て行うことが有効な場合があります。 家全体の整理収納案件 事例 大阪府 A様 50代女性。大学生長男様、社会人長女様、犬2匹と戸建て3LDKでの暮らし。今回のご依頼は、リビング、ダイニング、キッチン、奥様寝室、長女様の部屋、玄関周り。お子様が社会人、大学生になられ、奥様のテレワークが増え、生活スタイルが変化したことにより、使いにくいと感じることが多くなったとのこと。洗面所と長男様の部屋はご自身で行うとのことでした。(提案書作成、見積書作成部分の記述は省略します。)
【手順】
【整理収納の流れ】
① ヒアリングを行い、ご希望や普段の生活リズム等を十分にお伺いし、各部屋の使い方、ゾーニングを考え、“ゴール”をイメージし、設定します。
② 各エリアのゴールをイメージしながら、どのように分類し、どのように家具を配置し、収納を行っていくかの具体的な案をいくつか提案し、お話しながら決めていきます。 ③ 作業順序の戦略を立て、実行に移す。
【A様宅で実際に行った作業順序】
① 奥様の寝室:布団類、服、小物等を整理後、仮の収納を行い、リビングの整理時に、移動したモノを含めて分類し収納用品をそろえることになりました。量を減らし、自立する布団ケースで、立てて取り出しやすく収納する。ケースの必要数も確認。クローゼットには一部の服も収納するため、量のバランスや動線も考慮する。
② 長女様の部屋:物量がかなり多かったため、いきなりリビングのモノを運び入れるのは避け、まずは部屋のモノを整理。服の整理を行い、クローゼットに使用頻度を考えながら収納。長女様の趣味のグッズもわかりやすく分類し、収納する。
③ 玄関:スチールラック、下駄箱の整理。他の部屋で管理するモノを移動。 玄関のたたき部分の小さなスチールラックに、下駄箱に入らない靴を入れていたが、玄関全体の整理をして量を減らし、ラックの撤去を提案。(後にこのラックは、廊下で使用) 玄関近くの廊下の大きなスチールラックを整理し、棚の撤去または縮小を行い、視界が広くなるようにする。
④ キッチン、ダイニング:すでにご自身で不必要なモノを取り除いて整理をされており、モノの量は多くなかったのですが、再度モノの見直しを行い、食器棚の中身も含めた総合的な管理方法を考え、分類。食器棚の配置の変更。収納。
⑤ リビング:リビングで管理したいモノの整理。棚の位置を変更。収納。
⑥ 奥様、長女様の部寝室:リビングから移動したモノを含めて、各部屋で収納を行い、最終的に定位置を決める。
【ポイント】
・一か所だけを見てそのエリアだけで解決しようとするのではなく、家全体を俯瞰し、柔軟に考える。
・家全体の現状を把握し、生活リズムや動線等を確認し、各部屋の使い方やゾーニングを考える。(場合により大幅な変更も視野に入れる。例えば、ご家族の部屋の交換や家具の移動など)
・各エリアのゴールをイメージしながら、モノの分類の方法や収納方法など、いくつかの案を考え、快適に暮らせる、最適な方法を見つける。 ・目先の状況だけにとらわれず、引越しの予定や子供の独立など、将来のことも考慮し、無駄のない計画を立てる。
・効率的な作業順序を考えてスケジュールを決め、実行に移す。(必要な作業時間の見積もりも必要。家具の移動を伴う場合などは、この“段取り”により、作業効率や進み具合に影響する。)
・複数か所を行うことにより、収納用品が余ることも多いので、新たな用品の購入はすぐに行わず、転用も含めて考え、収納場所が確定した時点で収納用品を決めていく。(ご家庭、案件により違うので、臨機応変に)
※A様は老犬を飼っており、散歩から帰ったらすぐに犬用のおむつを使用するとのことで、玄関に配置。また、長女様が出勤時にお茶を持っていくため玄関にお茶を置きたいとのご希望がありました。一見、飲み物とおむつの組み合わせはどうなの?と思うかもしれませさんが、A様宅では今はこの配置が使いやすいとのことでした。)
【アドバイス】
一軒全ての作業を行う時には、その家に合った方法、順番を考える必要があります。 A様宅は、リビングにたくさんの服があり、玄関にもバッグや服があったため、リビングと各人の部屋と総合的に考える必要がありました。また、今回は「リビングのモノを自室に運びたくない」と長女様が最初におっしゃっていたこともあり、リビングを後半に回し、それぞれの寝室を整理しながら、必要・不必要の選別に慣れていただき、後半にリビングを行うという順番を提案しました。 一軒一軒、オーダーメイドで行うため、クライアントにとってどの方法がよいのか、どの順番が効率的か、どうすれば整理した環境が持続できるのかを考え、最後まで取り組んでいただけるような提案を、臨機応変に行う必要があります。ご自身の家の整理を行う時や、プロとしてご活躍いただく時に、ぜひ、“一か所だけで完結しようとするのではなく、家全体を見て、トータル的に考える”ということを実践してみてください。
プロフィール情報
整理収納アドバイザー1級認定講師
林 貴代
2013年整理収納アドバイザーとして起業。1級認定講座、2級認定講座、職場整理収納アドバイザー基礎講座等の認定講座開催、および整理収納作業を行っています。整理収納は、そのご家庭により、目指すゴールが違っており、最適な作業方法、手順、収納方法が違いますので、クライアントにとってベストな方法をアドバイスできるよう心がけております。 『林貴代』で検索
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